うちだ ひゃっけん(本名:栄造)
古京町の造り酒屋に生まれる。岡山中学時代、文芸誌の投書家となり、六高では志田素琴について句作、東大へ入ると夏目漱石の門下生となる。大正11年、幻想的な小説集『冥途』を世に問うが、あまりの独創性に文壇は冷やかであった。昭和9年、小説集『旅順入城式』、随筆集『百鬼園随筆』をもって改めて文壇に登場。殊に随筆は大いに迎えられて続々と刊行された。
戦後は、罹災体験の集成『東京焼盡』をはじめ、旅行記「阿房列車」シリーズは幅広い読者層を得た。『日没閉門』が最後の作品となる。昭和25年からは、その文才と人柄を尊愛する人が集まる「摩阿陀会(まあだかい)」が開催され、晩年まで続いた。
故郷岡山の思い出が幾度も作品に登場し、「阿房列車」では夜半や夜明けでない限り岡山駅のホームに下車したが、一方で「移り変わった岡山の風景は見ない方がいい」として、昭和17年の恩師の葬儀(この時も駅から会場まで人力車で乗り付け、帰路はそのままとんぼ返りした)などの数例以外は決して岡山に帰ろうとはしなかった。
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